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最高裁判所第一小法廷 昭和57年(オ)1081号 判決 1983年2月17日

上告人

工藤勝利

被上告人

村上晁

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

競売法(昭和五四年法律第四号による廃止前のもの)三二条によつて準用される民訴法(昭和五四年法律第四号による改正前のもの)六八七条によつて発せられた不動産引渡命令は、その性質が執行の方法に外ならないから、右命令の相手方とされた者がその執行の排除を求めるために民訴法(昭和五四年法律第四号による改正前のもの)五五九条一号、五六〇条、五四五条により請求異議の訴えを提起することは許されないとするのが当裁判所の判例とするところであつて(最高裁昭和三六年(オ)第一〇七七号同三八年三月二九日第二小法廷判決・民集一七巻二号四二六頁)、今なおこれを変更する要をみない。右と同趣旨に出た原判決は正当であつて、所論中これと異なる見解に立脚して原判決の不当をいう部分は採用することができず、その余の論旨はいずれも、原判決の判断と関係のない事項についての不服をいうものにすぎず、上告適法の理由とならない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(中村治朗 団藤重光 谷口正孝 和田誠一)

上告人の上告理由<省略>

昭和五七年九月二三日受付の上告理由書(補正、追加)記載の上告理由<省略>

昭和五七年九月二四日受付の上告理由書(補正、追加)記載の上告理由

第一審裁判所も又控訴裁判所においても、本件の判決理由に

不動産引渡命令が旧競売法三二条二項によつて準用される旧民訴法六八七条によつて発せられ……旧民訴下における右命令の性質は債務名義ではなく執行官に対する職務命令としての執行処分と解すべきであるからこれに対して右命令の相手方より請求異議の訴を提起することは許されない

として最高裁判所昭和三八年三月二九日の判決を引用しているが、この点について種々、学説、判例等によつて見解に相違があり争そわれて来たことは事実でこの問題については以前から前記最高裁判所判決によつて一応終止符がうたれたように思われたが、なお疑問点が残つていて、新らしい民事執行法においては、前記最高裁判所判決がとつた

不動産引渡命令は、執行官に対する職務命令としての執行処分と解すとする見解が一八〇度改ためられ以前からあつた「債務名義」とする見解がはつきり明記(民事執行法二二条三項)された

ことによつても明らかな如く、既に前記最高裁判所判決は民事執行法施行によつて死文化されたと見るべきである、仮りに本件は旧競売法及びそれによつて準用される旧民事訴訟法によつて発せられた不動産引渡命令であつても時流に即応した法令(以前から異説もあつたし疑問点もあつたのであるから)の精神に合致した判断を示すべきであるのに、裁判所における前記判断は、最高裁判所の前記判決に基いてなしたことは肯定しないわけではないが単に右の如き最高裁判所判決のみ金科玉条として、法令の解釈に柔軟性がなく特に本件の如きは、民事執行法によつて今までの見解が(最高裁判所判決)是正されたことが明らかで現に同法が施行されているのに敢えて前記見解を固持して判断したことは容認できない当然本件判決は取消されるべきである、かかる誤まつた判断による判決は容認できない

以上の如き理由であるから明白なる法令違反であると思料されるので本上告に及びました。

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